活躍する薬剤師
 薬局薬剤師
 医師の診察を受けた後、お薬は院外の薬局で調剤されることがあります。これを医薬分業といいます。医薬分業では医師が診療・治療に専念でき、お薬については専門家の薬剤師が責任をもつという合理的なシステムで、諸外国では医薬分業が主流になっています。薬局薬剤師は医薬品の用法・用量、相互作用やアレルギーなどをチェックし、患者さんが安心して医薬品を服用できるように努めています。
 また、セルフネディケーションの一環として、消費者に合った一般用医薬品 (OTC薬) の選択をお手伝いすることも薬局薬剤師の大切な役割のうちの一つです。
 その他、介護や在宅医療など、薬局薬剤師は多くの場で活躍しています。
 病院薬剤師
 医薬品の用法・用量、相互作用やアレルギーなどをチェックし、患者さんが安心して医薬品を服用できるように努めています。また、外来調剤した患者さんへはもちろんのこと、病棟では入院患者さんへ服薬指導したり、注射薬の混注をしたりする施設もあります。病院薬剤師は他の医療スタッフ (医師、看護師、臨床検査技師など) と共にチーム医療を通して、患者さんへよりよい医療を提供するよう努めています。
 学校薬剤師
 学校保健安全法第23条では、大学以外の学校に学校薬剤師を置かなければならないと規定しています。学校薬剤師は地方公務員特別職で、教育委員会の委嘱によります。具体的には学校環境衛生基準に則る以下の定期検査項目の実施・指導助言や、教育支援を行うことで、子供たちの健康に社会的な責任を持っています。
○下記の定期検査の実施及び指導助言
 ・換気及び保温等(空気検査等)・採光及び照明(照度検査等)・騒音検査
 ・飲料水等の水質及び施設設備に係る検査・水泳プールに係る検査
○保健室及び理科薬品の調査
○学校給食の食品衛生
○下記の教育支援
 ・くすりの正しい使い方・喫煙、飲酒、薬物乱用防止教室
○アンチドーピング活動 など
 治験コーディネーター (Clinical Research Coordinator : CRC)
 医薬品の研究・開発では、まず人に対して効果が期待される物質を特定し、動物実験 (非臨床試験) などを経た後に、人に対する臨床試験 (治験) が実施されます。そして、治験により有効性・安全性が確認されると、厚生労働省へ申請資料を提出し、当該疾患に対して妥当なものと認められると、医薬品として承認されます。治験では人を対象にした臨床試験が行われますが、試験には倫理性・科学性・信頼性が要求されます。そこでCRCが関連書類の作成やデータ収集、被験者のケア、医療スタッフへの説明などを通して、治験を円滑に進めることになります。CRCには薬剤師や看護師などが専門性を発揮して新薬開発に努めています。
 医薬情報担当者 (Medical Representative: MR)
 医薬品は情報が付加して初めて価値を示します。製薬企業のMRは医薬品が適正に使用されるため、医療従事者へ情報提供し、必要に応じて医療現場からの疑問に的確に回答します。MR認定センターではMRの質を担保するためMR認定試験を実施しています。
 医薬品卸
 医薬品は製薬企業の工場で生産され、医療現場 (病院や薬局など) で使用されますが、工場から医療現場に届くまでには医薬品の流通管理が重要になります。いくら工場で高品質な医薬品を生産したとしても、適正な流通管理がされていなければ品質は低下してしまいます。また、医薬品には法的規制があり、流通過程においても法令厳守が重要になります。医薬品卸の管理薬剤師は、流通過程におけるこれら事項を管理することで、患者さんの安全性確保に貢献しています。
一方、医薬品卸の特徴として、医薬品情報を総合的に収集・管理することがあげられます。
 薬学研究者
 大学や製薬企業、公益法人などの研究施設では、薬学研究にたずさわる薬剤師もいます。薬学領域の研究は基礎薬学研究と医療薬学研究に大別されます。基礎薬学研究とは、新たな作用機序の解明や、新規有効物質の合成、最近ではゲノムに関する研究なども行われています。一方、医療薬学研究では開発段階で分からなかった副作用等について、医療現場で使用した結果や文献などを分析し、より医薬品の有効性・安全性を追求します。さらに近年では国民医療費が圧迫されていることから、医薬品を効果と費用の両面から分析する薬剤経済分析も行われています。また、より良い医療環境を整備するため、医療情報や医薬分業に関する調査・研究も進んでいます。
 行政
 厚生労働省 (医薬品の審査、麻薬取締官など) や県庁・保健所 (薬局の監視、薬物乱用防止など) で薬事行政等に携ります。
その他にも薬剤師は多くの場で活躍しています。